もうずいぶん前のことだろうか。実家に帰った際、父の若い頃の写真を見つけた。縦6cm、横4cm程の小さな写真だった。なんでも東京で撮られた物だそうだが、その頃街を歩く人を勝手に撮って、気に入ったら買ってもらうという商売があったらしい。写真を撮った人が言うには、2000円ほどだったらしい。当時の2000円というととても高価で、なかなか支払えない金額であった。当時、父は徳之島から東京に来ていて、そういうことに慣れていなかったのか、むげに断ることができなかったそうだ。そのせいで帰りの旅費が足りなくなり、奄美大島までは帰れたものの徳之島まで帰ることができなくて、やむなく日雇いの仕事をして旅費を稼いだらしい。この話を聞いて、面白いなあと思ったのであるが、写真を改めて見てみると、白黒で大きさも小さいのであるが、その当時の父の様子が伝わってくるいい写真だった。2000円と高い買い物をしたが、若い頃の写真と苦い思い出が合わさって、案外これはこれでいい買い物をしたのかもしれないと思った。
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