小学校の頃,海の近くの団地に住んでいた。その団地の空き地に,父と母が野菜を植えていた。小さい頃だったので,とても広く感じたが,実際はそうでもなかったのかもしれない。暇があると,2人して畑に行き,そこで大根や人参,カブなどの野菜を作っていた。両親ともに植物に興味があり,庭に花を植えたり,野菜作りをしたりしていた。私たち兄弟は,そこにいって手伝いをするわけでもなく,畝と畝の間を跳んだり,鬼ごっこをしたりして遊んでいた。兄弟が多かったので,おもちゃは少なかったが,自然にあるものを使って遊んでいた。少し退屈そうだと思うだろうが,人が多いということは,それだけで楽しいのだ。両親は,野菜が大きくなると,私たち兄弟に見せて,「これが人参だよ。」と教えてくれたりした。私たち兄弟は,生活の中で,野菜に対する知識を付けていったように思う。2年程前,その団地に行ってみた。私たちの住んでいた家は,空き家になっていた。そして,玄関には,何かは知らないが,植物が生えていた。畑はその奥にあったので,多分にもう植物で覆われているのだと思う。そうした光景を見て,昔の記憶がよみがえるとともに,何か大切な者が失われたようで,とても悲しい思いがした。
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